スローライフ 2017.10.02

政治家や文化人が愛した城下町・小田原

 

小田原城下町リゾート

小田原といえば日本史に幾度も登場する要所。とりわけ戦国時代、関東一円に勢力を誇った北条氏の城下として有名である。小田原駅を出るとそびえ立つ天守閣が眼に飛び込んでくる。伊豆半島から国道135号線を北上してくると、丹沢の山々を背景にビルが立ち並ぶ小田原の町の中心に城の姿が見て取れる。
地図を見れば一目瞭然で、北条氏亡き後も小田原藩として栄えたこの街は、城を中心に武家屋敷、町人街、寺町といった街並みが形成されている。今でも当時の面影があちこちに残り、城下町としてのデザインコードが守られ通りを歩くだけでも楽しい。
 

桜の時期のお堀端。

 

神奈川県西部最大の都市として近代的なビルが建てられ、充実したショッピングモールと混在するように歴史の色合いがにじみ出る。純和風の木造建築を大切に守りながら歴史を刻む老舗の和食店、小田原提灯をぶら下げて情緒を醸し出す居酒屋、伝統的な製法を今に伝える蒲鉾店や和菓子店など、散策するだけでも新たな発見がありそう。

とりわけ小田原城の周辺は夏の夕涼みにもってこいの場所。ライトアップされた石垣や提灯の光がお堀に映り込み、思わず足を止める。城址公園は年間を通して様々なイベントが催され多くの人で賑わうが、天守閣を仰ぎ見ながら学校へ通う、お堀をまたぐ橋を渡って図書館へ行く、お堀端で現代アートを楽しむなど、ここで暮らす人々の普段の生活の中にはいつもお城が映りこんでいる。
 

情緒溢れる夜桜見物。

夕涼みに出かけたくなる賑やかな繁華街。

 

小田原を愛し、小田原に移り住んだ人々もいる。明治から昭和にかけて政治家や文化人など数多くの名士たちがこの地に別邸や別荘を構えた。その遺構はとりわけ小田原城の南端に位置する南町から西の板橋地区に続く高台に多い。伊藤博文が父のために建てた「滄浪閣」跡、今は「小田原文学館」となっている田中光顕別邸、黒田長政の別邸「清閑亭」、山下亀三郎別邸「対潮閣」跡などが海岸にも近い別邸街を形成していた。東海道本線のガードをくぐってさらに西へ進むと板橋地区へ入る。山形有朋の「古稀庵」、松永記念館と老欅荘、なまこ壁や石造アーチが残る町屋風の内野邸など、歴史的な建物を巡るのも興味深いだろう。高台から相模湾と伊豆半島が見える眺望の良さと、かつて国府津と箱根板橋の間を結ぶ路面電車が走っていたことも、名士たちがこの地に別邸を建てた理由に違いない。

 

名士たちの別邸街だった明治から昭和初期の面影が残る街角。

板橋近辺の高台から相模湾を望む。高層ビルと高架が建った以外は昔から変わらない眺めだろう。